新しい海ちゃん 4年目の始まり
うちのカレンダーは年度替わりと共に新しい年になります。
海ちゃんの脳梗塞から3年、心臓の手術から2年を無事に過ごしました。
まずはめでたし、です。
とはいえ、昨年はちょっと無茶してしまった。結果無事だったから良かったけど、思い返すとよく無事で乗り切ってくれたと思うしかありません。
2月に大分のツアーとにっぽん丸のクルーズ、3月にニューオリンズ。
レギュラーのハブ、ミントンハウス、ピアニシモ、Storyville、メグスタ&ブギウギプロジェクト ジャム音楽学院でのレッスンと月2回の言語リハビリ.....
少しずつ増やしてきたつもりだけど、演奏のペースが元通りに近づいてくると、リハビリがある分、やることが前より増えてしまうのです。
そして、5月から準備に入り、7月から年末まで、毎月1〜2週間、新造船でのクルーズ演奏。
仕事ができる、というのは嬉しいことだし、自信にも繋がりますが、そのためにはしっかり準備をしたい。でも出来上がり途上の現場なので、事前にわからないことや変更が多々あり、なかなかできないのです。私も混乱すること多く、突然の切り替えが大変な海ちゃんにとっては精神的にも負担が大きい。脳への負担は体にも出るのではないか、心配になりました。
何より大切なのは海ちゃんの心が穏やかであること。
ちょっと負荷が大きくても、それを乗り越えてみたい、という気持ちがあればやってほしいし、無理だと思えばやめればいい。最初に依頼されたときから内容も変わってきていて、正直、途中でリタイヤしてもいいや、やれるだけやろうとと腹を括りました。
でも海ちゃんは音を上げませんでした。
最初のころは疲れ切って、部屋で泣きながら練習してたこともあったけど、時間になるとさっと着替えてしゃっきり出かけていく。
やっぱりミュージシャンは最後は現場の空気をエネルギーにできるのです。
奏でる、それが伝わる、という感触が、海ちゃんの脳の細胞をすごい勢いで動かしていました。
高次脳機能障害の最も苦手なものの一つ「切り替える」という脳の働きがミシミシと音を立てるように回復していく様子は、私の心配を悠々と飲み込んでいきました。
すべての現場を終えた12月、海ちゃんの脳には力こぶができていたに違いない。
あの時できなくて苦しかったのがなんでだろう?って思い出せないくらいに、脱皮を繰り返すように、海ちゃんの脳がとらえる世界はどんどん霧が晴れていったのだと思います。
それが海ちゃんの心をとても穏やかにしていったことが私は何よりうれしかった。
病人と通常の状態の間、というのかな。
頑張りたい、という気持ちと、やっぱりこれはできないのか、という落胆と折り合いをつけて、病気に起因するものと、乗り越えられるものを見極めようとする。
脳が傷ついているにもかかわらず、通常よりもっと多くのことを考えなくてはならない。
心に過度の負担をかけないように自分を見つめながら進んでいくのは、凄く大変なことなのですが、そのコツを掴んだように見えます。
無理せず、また一歩、ね。
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